2012年01月26日
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三百字小説『砂島の魔女伯爵夫人』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 伯爵夫人は、通称砂島と言われるサンド島を領地とする魔女だった。むろん、魔女とはウワサに過ぎない。しかし、深夜に黒い服になり、血塗れで島を歩き回っているのは事実だった。

 勇気あるハンターは、魔女退治に砂島に乗り込んだ。ハンターは暗闇に紛れるために黒い服を着込んで暗視装置付きの銃を持ち、深夜待機した。

 すると、黒服の伯爵夫人が血塗れで現れた。ハンターは飛び出して「正体を見たぞ魔女。血の付いたその黒服が証拠!」と叫んだ。

 伯爵夫人は言い返した。「これは、夜行性の害獣を仕留めた時の返り血よ。あれを仕留めるのが趣味なの。それより、あなたも黒服じゃない。しかも、そのシミは血痕? 前の仕事で飛び散った返り血?」

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

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